ロンドンで生まれ、同地で没した。1789年にロイヤル・アカデミーの美術学校に入学、1790年に同アカデミーの展覧会に水彩画を初出品、1802年には正会員となる。若い頃から各地にスケッチ旅行に赴いており、1828年のイタリア旅行から1840年頃までに制作した風景画では、空気や光の様子を描きとめようとした。19世紀イギリスを代表する風景画家であり、印象派の画家たちにも多大な影響を与えた。
本作品は、1801年の夏にスコットランドを訪れた際に制作したスケッチをもとにして、インヴェラレイ城を所有するアーガイル公爵の注文により制作したもの。ファイン湾はグラスゴーの北西約60キロのところにあり、南から北へ深く入り込んでいる。この入江に突き出した岬の上にインヴェラレイ城が見えるという景色を、ターナーは多くの鉛筆素描や水彩に残した。本作品ではいささか荒れて波の高い水面には舟が浮かび、白い鳥がそのそばを飛んでいる。