山梨県立美術館は45年間をとおして、館の根幹となるコレクションの充実を図ってきました。本展ではコレクション内の優品を展示し、会期中はコレクションを活用した様々なイベントを開催します。当館の大黒柱である収蔵作品と、新たな鑑賞方法や活用方法を掛け合わせる、いわばコレクションの「リミックス」をとおして、美術館の今後の可能性を探る大切な機会とします。
土屋義郎《あざみ》1975年
美術館のコレクション(所蔵作品)はその館のアイデンティティや役割を考える上で大変重要です。当館では開館当初から「常設展」において、ミレーの作品やヨーロッパの風景画、そして山梨県ゆかりの作家の作品などの所蔵品を展示し、ヨーロッパの風景画を多く所蔵する美術館としてアイデンティティや、郷土の美術を広く発信するという役割を示してきました。「コレクション展」と呼称を変え、コレクションに様々な作品が加わった現在においても、その姿勢は変わっていません。
本章ではコレクション展の原点となる、開館初の常設展に展示した山梨ゆかりの作家の作品、即ち常設展の「スターティングメンバー」を展示し、その後の展開も紹介します。
当館は現在緑豊かな芸術の森公園の中に位置しますが、当館と緑や植物の繋がりは建設前まで遡ることができます。本コーナーでは、美術館建設前に山梨県農業試験場や山梨県緑化センターがあった歴史や、美術館建設後は様々な彫刻が鑑賞できる公園になった経緯などを軸に、関連作品を展示します。
同じ会社に所属していても、顔を合わせる機会の少ない人がいるのと同様、当館コレクション内でも一緒に展示されることが少なかったり、収蔵庫内でも離れて保管される作品が多くあります。もしそんな作品同士が出会ったら、お互いどんな会話をして、共通点を見出すでしょうか。本章ではコレクションの「親睦会」を開催し、作品の自己紹介や出会いの機会を設けます。
第1章「常設スタメン」では、開館初年度(1978年度)の常設展に展示された作品の一部を紹介しました。その多くは1960年代や1970年代の作品、つまり当時の「同時代美術」でした。45年の時を経て、当館にはそれ以降に制作された作品も多く収蔵しています。本展最後には、2001年以降、つまり21世紀に入ってから制作された、コレクション内の「若い」作品を展示します。現在から45年後の開館90周年にはどんな作品が展示されるか、あるいは22世紀生まれのコレクションはどんな形になるかを想像しながらご覧ください。