パリに生まれ、同地で歿する。画家だった父に絵の手ほどきを受け、1838年にドラロッシュのアトリエに入り、同年のサロン(官展)に初入選する。1836年のイタリア旅行をはじめ、各地を旅しながら戸外制作を行い、1843年以降たびたびバルビゾンを訪れた。水辺の風景を好んで題材とした彼は、アトリエを備え付けた小舟「ボタン号」を考案し、フランス各地の川に浮かべて制作をおこなった。1860年にはオーヴェール=シュル=オワーズに定住している。戸外制作を重視する態度は、モネをはじめとする印象派の画家たちに影響を与えた。
本作品には、オワーズ河の風景が描かれており、そこには小さな蒸気船が浮かんでいる。蒸気機関は19世紀になって発達した動力であり、この一見のどかな風景のなかにも近代化の波が押し寄せていることが分かる。川の対岸には家が並び、画面右下には洗濯をする女性が二人いるが、洗濯場は女性たちが定期的に集まる社交の場でもあった。