1857年4月にローマの鉄道省は、教皇ピウス9世(在位1846-1878)のお召し列車の礼拝室を飾る聖母マリア像の制作をミレーに依頼した。与えられた時間はわずか2ヶ月あまりだったが、ミレーは期限内に完成させた。ローマ教皇庁から与えたテーマは「無原罪の聖母」だった。「無原罪の聖母」あるいは「無原罪の御宿り」は、神の子であるキリストが宿る以上、聖母マリアも原罪を犯すことなく生を受けているはずという考えをあらわすものである。残念なことに、本作品は、崇高で美しいマリア像を所望した教皇の御意には沿わなかった。