晩年のミレーはバルビゾン村の他にも、故郷のグリュシーやヴィシーの風景をパステルで描いている。1868年9月、当時53歳のミレーは友人のアルフレッド・サンシエとともに、スイス国境近くのヴォージュ山地へ旅行し、さらに数日をスイスで過ごし、バーゼルやベルン、チューリッヒまで足をのばした。これがミレー唯一の国外旅行と考えられている。「早くバルビゾン村に帰りたい」と言いながらの旅行だったようではあるものの、そのときのスケッチをもとに、バルビゾン村のアトリエで完成させたのが、この豊かな色彩で仕上げられたパステル画である。