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『100万回生きたねこ』佐野洋子の世界展

山梨県立美術館開館40周年記念 ―愛されて40年―
『100万回生きたねこ』佐野洋子の世界展

2018年4月21日(土) ~6月17日(日)
※後期展示:5月22日(火)~
©JIROCHO, Inc. / KODANSHA

世代を超えて読み継がれ、昨年出版40周年を迎えた佐野洋子作『100万回生きたねこ』。本展ではその名作原画(特別出品)を中心に、代表的な絵本の原画、小説の原稿、女性や猫等を描いた銅版画作品をあわせておよそ100点展示することで、絵本作家・エッセイスト・画家、佐野洋子(1938年~2010年)のユニークで豊かな世界を紹介する。

『100万回生きたねこ』は、ミュージカルとしても上演された。本展では、演出家のスケッチ、衣装、小道具、舞台装置などの関連美術も展示する。

佐野は、第二次世界大戦終戦後、中国から引き揚げて山梨在住の伯父のもとに一家で身を寄せ、子供時代の3年ほどを過ごした。絵本やエッセイから感じられる佐野の自然と生き物を見つめるあたたかい眼差しは、多感な年頃の山梨暮らしによって形成されたものかもしない。

佐野がより身近に感じられるように、本展では彼女の幼い頃からの写真や、作画道具、愛用品なども展示する。また、会場には『100万回生きたねこ』の主人公「とらねこ」と一緒に写真が撮れたり、絵本を読んだりできるコーナーもあり、誰もが楽しいひと時を過ごせる展覧会となっている。

名称
山梨県立美術館開館40周年記念 ―愛されて40年―
『100万回生きたねこ』佐野洋子の世界展
会期
2018年4月21日(土) ~6月17日(日)
※後期展示:5月22日(火)~
開館時間
9:00~17:00
※入館は16:30まで
会場
特別展示室
休館日
4月23日(月)、5月7日(月)・14日(月)・21日(月)・28日(月)、6月4日(月)・11日(月)
観覧料
一般 1,000円(840円) 大学生 500円(420円)
※( )内は20名以上の団体料金、前売料金、県内宿泊者割引料金
※高校生以下の児童・生徒は無料(高校生は生徒手帳持参)
※県内65歳以上の方は無料(健康保険証等持参)
※障害者手帳をご持参の方、およびその介護をされる方は無料
主催
山梨県立美術館 山梨日日新聞社・山梨放送
後援
テレビ山梨 テレビ朝日甲府支局 朝日新聞甲府総局 毎日新聞甲府支局
読売新聞甲府支局 日本経済新聞社甲府支局 産経新聞甲府支局
共同通信社甲府支局 時事通信社甲府支局 山梨新報社
日本ネットワークサービス エフエム富士 エフエム甲府
特別協力
オフィス・ジロチョー
企画協力
アートプランニングレイ
協力
講談社 ホリプロ 山梨交通株式会社

展示構成

第1章『100万回生きたねこ』の世界

『100万回生きたねこ』は、単純なハッピーエンドに終わらない結末であるのに、読み終わった後、「ああ、よかった」、「何だかほっとした」という気持ちになる。それだけでなく、現実を肯定し、受け止めようという気持ちにもなる。絵本には、現実逃避ではなく、現実に立ち向かう勇気、生きる希望を与えるという大きな役目がある。『100万回生きたねこ』は、それをストレートな表現ではないにせよ、しっかりと果たした「絵本の中の絵本」と言うことができる。

加えて、『100万回生きたねこ』は、ミュージカルとしても上演され、また、近年は、フランス語、ロシア語、中国語等に翻訳され、電子書籍化もされた。このように、出版40年経た今も「生きている絵本」であり、これは特筆すべきことである。

第1章ではその『100万回生きたねこ』の世界を3つに分けて紹介する。PARTⅠでは絵本に基づいたミュージカルの舞台美術等関連作品、PARTⅡでは絵本原画、PARTⅢでは地元の子供たちによる『100万回生きたねこ』をテーマにした作品を展示する。

『100万回生きたねこ』 佐野洋子 作・絵 講談社 1977年発行
23ページ原画 カラー写真修正液・紙 ©JIROCHO, Inc. / KODANSHA

特別出品

出版40周年と当館開館40周年を記念して、本展では『100万回生きたねこ』原画全18点を展示する。原画保存のために近年展示が制限されてきた『100万回生きたねこ』だが、会期中展示替え(前期9点、後期9点)を行うことで、展示が特別に許可された。あわせて描かれた当時の鮮やかさを再現したデジタルリマスター版も展示する。

第2章 ねこ、ねこ、ねこ

絵本の主人公と言えば、どんな動物を思い浮かべるだろう。人によると思われるが、クマやキツネやウサギが多いのではないだろうか。佐野の絵本では、猫を主人公にした物語が多い。原画初公開の『すーちゃんとねこ』、友達探しをするユニークな猫を描いた『さかな1ぴき なまのまま』、お人よしなライオンと身勝手な猫たちが登場する『空とぶライオン』の3作を展示する。

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『さかな1ぴき なまのまま』 佐野洋子 作・絵 フレーベル館 1978年発行
表紙原画 油彩・麻布 ©JIROCHO, Inc.

第3章 永遠のこども

佐野は大人になっても子供の視点を失わなかった稀有な作家である。子供の頃を思い出しながら、子供のままの初々しい感性で描いた『わたしのぼうし』 は、誰もが懐かしいと感じる絵本となっている。また、佐野の山梨時代の思い出を綴った小説の原稿を展示する。

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『わたしのぼうし』 佐野洋子 作・絵 ポプラ社 1976年発行
表紙原画 パステル、水彩・紙 ©JIROCHO, Inc.

第4章 自然への眼差し

終戦後、佐野は、中国から引き揚げて山梨在住の伯父のもとに一家で身を寄せ、3年ほどを過ごした。その間、山梨県の写生大会で知事賞を受賞している。その後、静岡を経て東京に落ち着くが、晩年の一時期は北軽井沢を拠点に作家活動を行った。絵本やエッセイから感じられる佐野の自然と身近な生き物を見つめるあたたかい眼差しは、山梨、静岡、北軽井沢と自然豊かな地に暮らしたことが影響しているかもしれない。谷川俊太郎の詩集『ふじさんとおひさま』の挿絵原画、岸田今日子が文章を書いた絵本『ちょっとまって』の原画、自作絵本としては最後の作品となった『ねえ とうさん』の3作品を展示し、佐野の自然と生き物へ向けられた眼差しを確認する。

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『ふじさんとおひさま』 谷川俊太郎 詩 佐野洋子 絵 童話屋 1994年発行
表紙原画 クレヨン・紙 ©JIROCHO, Inc.

第5章 銅版画との出会い

佐野のアーティストとしての側面、そして一女性としての生き様を作品でたどる。1992年より佐野は「女の一生」と題した個展を開催した。その出展作品を含む15点の銅版画と、銅板やニードルを展示する。

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『あっちの女 こっちの猫』 佐野洋子 文・絵 講談社 1999年発行
表紙カバー原画 エッチング・紙 ©JIROCHO, Inc.