※8月8日~9月12日の臨時休館に伴い、会期を変更しました。
「新版画」とは、江戸時代の浮世絵版画を復活させるために大正から昭和前期にかけて、近代の版画家たちが切磋琢磨して生み出した木版画のことをいいます。版元の渡邊版画店の企画で誕生した新版画は、橋口五葉(はしぐち・ごよう)や伊東深水(いとう・しんすい)の美人画、川瀬巴水(かわせ・はすい)や吉田博(よしだ・ひろし)の風景画、名取春仙(なとり・しゅんせん)の役者絵などで人気を得ました。後進の笠松紫浪(かさまつ・しろう:1898~1991)は、巴水に追随する風景画家として活躍します。やがて新版画ブームは終わり、新たな創作版画の時代へ変わりますが、紫浪は、創作版画の特徴でもある自刻自摺を習得しながら、新たな木版画を生み出し続けました。
近年、巴水を筆頭に、五葉や博らが再評価され、かつてないほどに新版画を見直す機運が高まりつつあります。当館は、国内外の美術館の中で、紫浪作品の所蔵数が最大であり、笠松家から寄贈を受けた版木やスケッチなどの資料類も充実しています。本展は、おもに当館の所蔵する新版画、なかでも紫浪作品を中心に紹介することで、作品の数々を堪能するばかりでなく、それらの素晴らしさを再認識していただく絶好の機会となるでしょう。